トップへ AVP研究会会則 お知らせ リンク集 お問い合わせ




ヒトES細胞から機能的バソプレシンニューロンへの分化誘導

小川晃一郎1)、須賀英隆1)、水野正明2)、小谷侑3)、長崎弘3)、有馬寛1)

1) 名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科学
2) 名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター
3) 藤田保健衛生大学 生理学講座

【背景】
視床下部-下垂体後葉系の中心的存在であるバソプレシン(AVP)ニューロンは、AVP分泌量を変化させることで血漿浸透圧を精密に制御している。AVPが枯渇した中枢性尿崩症に対し、現状ではホルモン補充療法を行っているが、コントロールに難渋する場合がある。血漿浸透圧に正しく反応する視床下部AVPニューロンが出来れば、これを再生医療に用いて現状の問題点を改善できる可能性がある。発生学上、視床下部は神経管の中で最も吻側から発生するとされる。視床下部分化の初期マーカーとしてRxが重要である。視床下部は更に背側と腹側に分かれ、それぞれPax6およびNkx2.1が発現する。背側視床下部からはOtpを経てAVPが発現する。

【目的】
ヒトES細胞からAVPニューロンへの分化誘導法を確立する。

【方法】
分化誘導法の検討においては、胎児発生を再現することに重点を置いた。発生の各ステップごとに最適化するために、RxやPax6・Otpなどをマーカーとして活用した。神経管吻側の誘導に適するとされるgfCDMを用いて浮遊培養を行った。

【結果】
マウスES細胞の場合と異なり、gfCDMのみではヒトES細胞が分化しなかったため、培地の調整を行い、Rxが高率に発現する条件を得た。次に背側および腹側視床下部を作り分ける条件を検討し、背側からOtpの発現を確認した。更に分散培養を行うことで神経分化を促し、AVPニューロンを免疫染色にて確認した。KCl刺激によりAVP分泌の増加を認めた。また、腹側視床下部の分散培養ではAgRPおよびMCH等のニューロンが認められた。

【結語】
発生に沿った分化を再現することで、背側および腹側視床下部の作り分けに成功し、ヒトES細胞からAVP及び他の視床下部ニューロンへの分化誘導に成功した。