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M2ムスカリン受容体は視索上核におけるバソプレシン分泌を促進する

○永野宏1)、松山勇人1)、齋藤正一郎2)、酒井洋樹3)、Wess Jurgen4)、小森成一1)、海野年弘1)


1)岐阜大学大学院 連合獣医学研究科 病態獣医学連合講座
2)岐阜大学 応用生物科学部 獣医解剖学研究室
3)岐阜大学 応用生物科学部 獣医病理学研究室
4)NIDDKD-NIH

【目的】
ソプレシン(AVP)は、視床下部視索上核(SON)および室傍核(PVN)に存在する大細胞性神経分泌細胞の細胞体で合成され、下垂体後葉の神経終末から血中へと分泌される。これまで、ムスカリン性アセチルコリン受容体がAVPの分泌を促進性に調節する可能性が示唆されており、このうち視床下部ではM2ムスカリン受容体(M2R)が多く発現していることも報告されている。しかし、M2Rを介したAVPの分泌調節機構については十分に解明されていない。そこで本研究では、この点を明らかにする目的でM2Rを欠損した(M2KO)マウスを用いてAVPの合成・分泌能について検討した。

【方法】
実験にはM2KOマウスおよびその野生型(WT)マウスを使用した。AVP合成ニューロンの数を比較するため、SONおよびPVNにおける抗AVP抗体を用いた免疫組織化学を行い、AVP免疫陽性細胞数を計測した。また血漿AVP濃度をラジオイムノアッセイにより定量した。抗利尿作用を評価するために飲水量、排尿量および排尿回数を測定し、血液生化学検査の結果から血漿浸透圧を算出した。さらに腎臓のV2バソプレシン受容体の機能を評価するため、その発現量と反応性を測定した。

【結果】
AVP陽性細胞数は、M2KOマウスのSONで有意に低下していたが、PVNでは差が認められなかった。M2KOマウスでは、血中AVP濃度がWTと比較して有意に低下しており、飲水量、排尿量および排尿回数が有意に増加していた。血漿浸透圧はM2KOマウスにおいて有意に上昇していた。一方、V2受容体の発現量および外来性に適用したデスモプレシンに対する反応性は、両者間で差が認められなかった。

【結論】
M2RはSONにおけるAVPの合成・分泌を促進性に調節することにより体液量の恒常性調節に関与することが示唆された。