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マウスにおける中枢性昇圧反応と動機付け行動:バゾプレッシンV1a受容体の役割

○住吉愛里1)、増木静江1)2)、能勢博1)2)


1)信州大学大学院医学系研究科・スポーツ医科学
2)信州大学バイオメディカル研究所

【背景】
我々は、マウスにおいて大脳皮質活動の上昇が血圧反射を抑制すると、それをトリガーとして血圧が上昇し自発運動を開始することを報告した。さらに、この大脳皮質活動上昇後の一連の反応に中枢のV1a受容体が関与することを報告した。しかし、この大脳皮質活動の上昇の生理的意義は不明である。

【目的】
我々は、この大脳皮質活動の上昇は、食欲などの動機付けと関連しているのではないか、と考えた。そこで、絶食させ食欲という動機付けを高めた時、大脳皮質活動上昇後の昇圧反応との連関が亢進し、餌の探索行動が亢進するか、この反応に循環中枢(孤束核)のバゾプレッシンV1a受容体が関与するか、を検証した。

【方法】
自由摂食、絶食、回復の条件をそれぞれ負荷した連続3日間、7時/19時の明暗サイクル下で、V1a受容体遺伝子欠損マウス(KO, n=10)、さらに正常マウスの孤束核にV1a受容体阻害剤を局所投与したマウス(BLK, n=10)において活動量、大脳皮質活動、血圧反射、行動パターン(DVC)を同時連続測定し、それらの反応を対照マウス(CNT, n=9)と比較した。大脳皮質活動は、脳波のθ波とδ波のパワー比から求めた。血圧反射は、血圧の自発性動揺に対する心拍数変化の相互相関関数から求めた。

【結果】
CNTにおいて、絶食日には自由摂食日に比べ、大脳皮質活動上昇に対する血圧反射抑制、餌の探索行動といった一連の反応が亢進した(すべてP<0.05)。しかし、回復日には自由摂食日のレベルに戻った(P>0.1)。一方、KOでは絶食日に大脳皮質活動上昇後の一連の反応の亢進が起きなかった (すべてP>0.1)。またBLKも、KOとほぼ同様の結果を示した(P>0.06)。

【結果】
大脳皮質活動上昇に伴う昇圧反応は、動機付け行動に重要なこと、この際の昇圧反応に孤束核のV1a受容体が関与することが示唆された。