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海外研究室便り No.8

 2007年11月より、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学医学部 (Washington University School of Medicine) のDepartment of Developmental Biology の今井眞一郎先生の研究室に博士研究員として留学しております。

 ワシントン大学医学部は、研究費獲得ランキングでは常にトップ2-3に位置する全米屈指の研究大学であるとともに、内科学のバイブルである「ワシントンマニュアル」の発祥の地としても知られております。ワシントン大学医学部の最も強力な基礎部門と言えるDepartment of Developmental Biologyに所属する今井研究室は、1) 哺乳類の老化・寿命制御の分子メカニズムの解明と、2) Productive Aging を可能とする新しい栄養学的治療法の開発、を目標に研究を展開しております。研究室は、私を含めた博士研究員2名と、PhDコースの学生2名、ラボテクニシャン2名より構成されております。

 老化制御因子としては、腎臓領域ではKlotho が有名ですが、我々は、NAD 依存性脱アセチル化酵素SIRT1および、哺乳類NAD合成系の生理学的重要性に着目し研究をおこなっております。最近では、この哺乳類NAD合成系の律速酵素であるNAMPT、それにより調節されるNAD合成系が体内時計で果たす生理学的意義を解析し誌上報告しております。現在は、これらの分子が老化、あるいは老化に密接に関係する代謝において果たす役割について検討を行っています。

 ワシントン大学医学部の魅力の一つとして、トランスレーショナル型リサーチの迅速な展開が行いやすい点があげられます。例えば、当大学のゲノムセンターが急性骨髄性白血病患者から得られた正常細胞と癌細胞の全ゲノムシークエンスを行い、世界で初めて全ゲノム情報に基づいた癌治療への道を開いた事は記憶に新しいところです。私も、先に紹介した基礎研究に従事するとともに、内科医としてのバックグランドを活かして臨床領域の研究室とも積極的な共同研究を展開することで、NAD合成系を標的としたトランスレーショナル型リサーチを展開していこうと日々精進しております。

 (写真は、デンマークからの短期留学生の歓迎会をかねた昼食会のもので、
  一番右側が 今井眞一郎先生、一番左側が筆者です)


吉野 純  慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科