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海外研究室便り No.5

 2008年1月よりCentre for Integrative Physiology, University of Edinburghに留学しています。2008年4月からは日本学術振興会の海外特別研究員として採用されます。Edinburghはスコットランドの首都であり、ユネスコの世界遺産にも登録されている、中世の街並みが残るとても美しい街です。

 当センターは、Neurophysiology、NeuroendocrinologyやExperimental Physiologyなど、いくつかの部門に分かれており、総勢50名以上の大所帯ですが、私の所属するNeurophysiology部門はMike Ludwig教授はじめ6名です。Mike Ludwig教授は、樹状突起から神経伝達物質が放出されるメカニズムとその情報処理機構を、電気生理学、神経解剖学、神経内分泌学および分子生物学的手法を用いて研究しているこの分野の第一人者です(Nature 2002, Nature Reviews Neuroscience 2006)。

 私の研究は、視床下部視索上核(SON) への3つの求心性経路である嗅球、脳幹(A1およびA2細胞群)および終板器官に焦点をあて、in vivoにおける樹状突起からのバゾプレッシンおよびオキシトシンの放出制御を活動電位のモニタリングを同時に行いながら、当研究室独自に開発したマイクロダイアリシスと電気生理学的な化学センサーを組み合わせた装置を用い、そのメカニズムを検討することです。この装置を使用することにより、高張食塩水負荷、絶水および高張食塩水静脈投与などの様々な刺激による樹状突起での微細な変化をリアルタイムに捉えることができます。

 中枢でのバゾプレッシンおよびオキシトシンは、これまで知られていた体液調節および子宮の収縮作用・射乳反射だけではなく、攻撃性、子育てや信頼関係など社会行動を調節する因子として最近注目され、不安障害、鬱病およびストレス反応に多いに関連がある可能性があります。この樹状突起からの神経内分泌のメカニズムを明らかにすることによって、新しい治療戦略の発展に貢献できることが期待されます。

 Mike Ludwig教授は2007年に教授に就任したばかりですが、若く、バイタリティーに溢れ、新しい発想をもった優れた研究者です。このような優れた研究者のもとで、新しい手法を習得するのみならず、研究に対する考え方および取組み方を目の当たりにすることは、貴重な経験であり、充実した研究生活が送れると思います。当研究室の詳細につきましては、どうぞhttp://www.cip.ed.ac.uk/members/HRB/ludwig/index.htmをご覧下さい。(写真はMike Ludwig教授が2007年7月に来日した際、京都のとある湯葉・豆腐店における研究打合せでの一コマ。左がMike Ludwig教授、右が私。)




橋本弘史 産業医科大学医学部第1生理学